現代の夫婦関係を問い直す――『夫婦』不在社会が描く日本の物語の危機

文芸

3秒で分かる要約

★★★★☆
おすすめ度
スコア: 4.2/5.0
難易度: 読みやすい

こんな人向け:

  • 現代の夫婦関係や恋愛に悩む人
  • 文芸評論や物語分析に興味がある人
  • 『推しの子』などの人気作品の深い考察を求める人
  • 仕事と家庭の両立について考えたい人
読む目安:2.5時間

本書の読みどころ

昭和から令和の大ヒット作品を分析し、現代の夫婦が抱えるディスコミュニケーションの実態を浮き彫りにした一冊。働き方改革後のパートナーシップのあり方を、文芸評論家・三宅香帆が問い直します。

結論:この本はこんな人に刺さる

文学やドラマ、映画の解釈を通じてパートナーシップを考え直したい読者、現代の夫婦関係に違和感を感じている人、そして『推しの子』『汝、星のごとく』などの作品が共通して何を描いているのか気になる読者に最適。著者の前作『考察する若者たち』の読者にも、その思考の延長線上にある一冊として推奨できます。

どんな本?

本書は、現代日本の物語に登場する夫婦の姿を通じて、現実のパートナーシップの問題を問い直す文芸評論です。村上春樹からドラマ『海のはじまり』まで、多くの作品を横断的に分析し、なぜ「夫婦」が不在なのか、そしてそれが社会に何をもたらしているのかを考察します。

著者は、文芸が現実の欲望を映し出すと同時に、それに影響を与える力があると指摘。日本の物語に求められる、これからの夫婦像とは何かを提示します。

新刊Hubがこの本を紹介する理由

テレビドラマや映画、アニメなど、ポップカルチャー全般を通じたパートナーシップの議論は、働き方改革以降の社会的課題として重要性を増しています。著者・三宅香帆は『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』『「好き」を言語化する技術』などで知られ、現代人の思考や感情を言語化することに定評があります。

本書はそうした著者の視点を、夫婦関係という普遍的なテーマに向けた力作。単なる関係論ではなく、物語を通じた社会診断として、多くの読者にとって考えるきっかけになるでしょう。

あらすじ

あなたが最近見た映画やドラマに、幸せな夫婦のシーンを思い出せるでしょうか。

本書は、そんな疑問から始まります。昭和の名作から令和の話題作まで、日本を席巻した物語たちを丁寧に分析すると、驚くべき共通点が浮かび上がってきたといいます。

それは「夫婦」の不在です。

『推しの子』『THE FIRST SLAM DUNK』『汝、星のごとく』といったヒット作、月9ドラマ『海のはじまり』、村上春樹の作品世界、坂元裕二の脚本…これらすべてが示唆しているのは、現代の物語に真摯に向き合う夫婦像がいかに稀有であるか、ということ。

忙しい現代社会で、仕事と家庭を両立させることの困難さは、実は物語の中にも反映されているのです。著者は問いかけます。

なぜ文芸は「夫婦」を描かなくなったのか。そしてそれは、現実のパートナーシップにどう影響しているのか。

この本の魅力

魅力① 複数ジャンルの大ヒット作を横断的に分析する視点の鮮烈さ

『推しの子』『THE FIRST SLAM DUNK』『汝、星のごとく』という、アニメ、映画、小説という異なるメディアの作品が、いかに共通の問題提起をしているのか。その分析を通じて、読者は自分が無意識に消費してきた物語の層の厚さに気づかされます。

単一の作品論ではなく、横断的な比較分析だからこそ見えてくる、現代日本社会の集合的な欲望と不安が浮き彫りになるのです。

魅力② 月9ドラマ『海のはじまり』など、最新の話題作も分析対象に

本書が参照する作品は、決して過去の名作ばかりではありません。2024年の月9ドラマ『海のはじまり』のような最新作も分析対象として含まれており、リアルタイムの文化現象を読者が追体験できます。

著者の視点を通じることで、ドラマを見た直後の感覚がより言語化され、立体的に理解できるようになるでしょう。

魅力③ 著者の代表作から続く、現代人の思考と感情を読み解く手法の冴え

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』『「好き」を言語化する技術』『考察する若者たち』の著者だからこその、思考の厳密さと読みやすさが両立しています。

文芸評論という堅いジャンルながら、多くの読者が著者のSNS発言や著作に共感する理由は、現代人の「ここまで言語化してほしかった」という欲求に応えるからです。本書も同様の価値を提供します。

公開情報から想定できる読書体験

本書は評論家としての理論的厳密さと、一般読者の共感を両立させた作品です。夫婦関係についての「ハウツー本」を期待する読者には違うかもしれませんが、自分たちが見ている物語が何を問いかけているのか、その深層を知りたい読者にとって最良の一冊となるでしょう。

こんな人におすすめ

  • 村上春樹の世界観に何度も引き込まれた読者
  • 最近のドラマやアニメを見ても満足できず、その理由を言語化したい人
  • 『考察する若者たち』など著者の前作を読んだ人
  • 働き方改革以降の夫婦関係の変化について考えたい人

読む前に知っておきたいポイント

本書は、小説やドラマ、映画をテーマに展開する文芸評論です。各作品の具体的な場面や設定が引き合いに出されるため、可能なら事前に原作やドラマを見ておくと理解が深まります。

ただし、全作品を鑑賞していなくても、著者の解説を通じて各作品の問題意識を知ることはできます。パートナーシップそのものの「正解」を求める読者よりも、現代社会における夫婦関係の課題を思考実験的に考えたい人向けです。

著者について

三宅 香帆

「夫婦」不在社会

「夫婦」不在社会

著者三宅 香帆
出版社講談社
発売日2026年7月16日
価格1,200円+税
ページ数240ページ
判型新書判
ISBN9784065431740

類似作品

著者の前作『考察する若者たち』や『「好き」を言語化する技術』を読んだなら、本書はその思考の延長線上にあります。また、清田隆之『婚外恋愛』など、現代のパートナーシップについての新しい視点を求める読者にもおすすめです。

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現代の物語が何を描き、何を避けているのか。その謎を解く鍵がここにあります。

ぜひ手に取ってみてください。

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